鉄鍋餃子というものが、博多でえらく人気らしい。
その発信地「鉄なべ」は、二十年ほど前に屋台よりスタートしたそうで、現在では、中洲、祇園、荒江と福岡市内に三軒の店を構え、どの店も毎晩盛況だという。
博多を訪れても、ラーメン屋ともつ鍋屋廻りに精を出していたため、そんな名物があるとは長いこと知らなかったが、幸いにして東京で出会い、すっかりファンになってしまった。
出会ったのは、阿佐谷の「なかよし」だ。
「なかよし」は、博多出身のご主人中島義雄さんが、小さい頃より親しんできた鉄鍋餃子を「東京で広めたい」と開いた店である。
「東京で広めたかった」その味は、各種餃子の過当競争地帯、東京でも見事に受け、現在では開店から深夜まで、客が途切れることがない。
そんな客たちは皆、店に入ると
「餃子五人前とビールね」。などと品書きも見ずに、とりあえず餃子を頼んでからほかの注文を考える。
こうして大量の餃子の注文が次々と入る厨房は、常に戦場のような忙しさだ。 やがて各テーブルに餃子が運ばれると、どの席からも必ず、「オオッ」と歓声が上がる。
厚手の鉄製鍋にぎっしりと並べられ、むらのないきつね色の焼き目を上にして、ジュウッと音を立てている小ぶりの餃子。
その雄姿には、誰もが、何度見ても興奮させられてしまうのだ。
ただ、ここでふと考えるのは、なぜ鉄鍋に入れられた餃子は、焦げた面が上になっているかということ。聞けば、一度フライパンで焼き、熱した鉄鍋をかぶせて裏返すとのこと。そのために最後まで熱々の状態で食べられるのだ。
さてその熱々をほおばれば、こびりつくように焼けた薄皮の歯触りも加わって、皮はカリッサクッと香ばしく、同時にモチッとした弾力をも弾ませる。餡は、肉が少なく、白菜 ニラ中心の軽やかなタイプだ。
つけダレは、酢醤油に辣油でもいいが、博多流に酢醤油と柚子胡椒で食べると、爽やかな香りと塩気、辛みが加わって、一人前十個など軽く食べられてしまう。 そこに抜群の相性のビールが加わればもう止まらなくなって、最低でも二人前、五人前くらい食べてしまう人もいる。
しかも安い。
以上が連夜盛況の理由である。